キスだけでは終われない

無事にシンガポールから戻ってこれた俺はカナのお祖父さんに会いに行った後、須藤ホールディングスの本社に向かった。

本格的な勤務は来週からになるが、部屋の整理や提携先への挨拶など少しでもできることを片付けておこうと考えていた。

まずは社長室に顔を出し、その後で会長室に顔を出す。

「おぉ、戻ったか」

「はい、戻りました。正式には来週から業務を始めますが、いろいろ整理することもあるので、会社には顔を出しますよ」

「副社長として頑張ってくれよ」

「そういえば、祖父さん。ヴェスティエの会長と知り合いか?」

「ヴェスティエ?坂口か?ん?あいつとは仕事で関わることはなさそうだが、どうかしたか?」

「やっぱり知り合いなのかー。で、どんな関係なんだよ」

思わず額に手を当て天井を見上げる。どんな関係かは聞く前に祖父と彼女のお祖父さんの口調で察する。あまり良い関係ではないだろう。

「急にそんなこと聞いてくるとはなんだ?」

『なんだ』と聞き返されたら、正直に言うしかないと腹をくくる。
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