冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
(私は化粧や着替えに仕える魔法は使えないから、自分で整えるしかないけど――とにかくっ、やるしかない!)

誰かに、本当の髪の色は見られてはいけない。人の目がある時は、生活魔法をかけ続ける気持ちでミリアは任務に挑んでいた。

王宮についたら、何より先に、世話を不要であると侍女たちを遠ざけるのが第一作戦だ。

それが叶うかどうかで、半年間の滞在任務の難易度が変わってくる。

(さすがに休憩なしだとつらいんだよね……)

長時間の馬車旅でつらいのは、カーテンからオレンジ色の髪が見えたら終わりなので、その間、生活魔法を維持し続けることだった。

そのせいで、歩いてもいないのにミリアは体力を奪われ続けている。

(姫様の役に立つって決めたでしょ! 城まではあともう少しっ、踏ん張れ私!)

自分の心の中で喝を入れる。

車窓のカーテンをちらりとめくってみると、もうそこまで王宮が迫っていた。

自国とは比べ物にならない規模だった。まだ距離があるのにいくつもの尖塔が見えて、敷地を囲む高い塀と立派な青い屋根も目に入る。

――怖い。

これが本当に嫁入りであったのなら、と考えてミリアは震える。

(指名された相手と結婚しなければならない姫様の覚悟が、分かったかも……)

本人たちの意思に関係なく〝王〟が決める強制結婚だ。

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