冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
その夜、ミリアはテーブルの灯かりを一つ付けたまま、腕枕をして月光があたるガラスケースの花を眺めていた。

肩にかかっている髪は、オレンジだ。

最後にやってきた侍女たち、寝支度をして帰っていったのは一時間前のことだった。あれからミリアは眠れないまま、椅子を窓辺まで引っ張り、腰かけてからぼうっと長い時間を過ごしていた。

「不思議だな……こうして入れているともちがいいっていうのは、本当なんだな」

茶葉の保存用に使われているものだ。

容器に移しているのを見て質問した際、侍女にそう教えられて『ほんとかな?』と不思議に思っていたのだが、花はまだしおれていない。

エレンヴィア城で夕食をいただいたのち、ミリアは王太子専用馬車に乗ってカイたちと城まで戻ってきた。

到着した頃にはすっかり夜になっていたが、王族御用達の白亜の馬車は目立っていたようだ。

カイたちに下車を手伝われた際、兵たちも大袈裟に驚いていた。外出予定の知らせは受けていたが、急だったので王太子の城だとまでは把握していなかったらしい。

でも、そんな光景もミリアの関心を引かなかった。

(……私、好きなんだなぁ)

月光にオレンジ色の髪をきらきらとさせて、ミリアは憂うような大人の女性の溜息を小さな唇からもらした。

エレンヴィア城を出てからずっと、ミリアの頭にあるのはアンドレアのことだった。

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