冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
その時、衣装を着替えたエミリオが戻ってきた。

「シャルスティーヌ、弟の妻をたらしこんだらだめだよ。とても怒られるだろうからね」

「たらし込むだなんて、ひどい言いがかりですわ」

ミリアの椅子に寄りかかっていたシャルスティーヌが、するりと手を離し、くすりと笑って夫に歩み寄る。

「そうかな。私は、君のせいで女性にまで嫉妬させられた身なんだけど」

「同性婚がないこの国が珍しいのですわ。性別関係なく、みんな恋敵になりますのよ。わたくしは、あなたの周りの殿方にも嫉妬しましたわ」

シャルスティーヌが、つらつらと告げてにっこりと笑う。

初めてエミリオの笑顔が困った。

「……まいった」

「あら、もうよろしいんですの?」

「これ以上、弟の妻の前で恥ずかしい黒歴史を晒されたらたまらないからね」

エミリオがしてやられている光景、というのも珍しいように思えた。

ミリアも、カイたちと同じく小さく笑い出しそうになった。なんだか、シャルスティーヌにはスカッとさせられた。

ビビアンヌがワゴンを押して戻ってきて、三人分の紅茶が用意された。

話し上手な二人のおかげで、ミリアはしばらく胸の苦しさは思い出さなかった。そして早い夕食時間まで、楽しい談笑の時間を過ごすことになった。



◇◇◇



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