冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
「到着の予定はまだ定まらないか? 早ければ午前中内だという話だっただろう」

「はぁ、早まりそうだという報告は昨日たしかに受けていますよ。向こうの〝姫〟が早く会いたがって、休憩を短めにしているとか。こまめに報告するよう伝えてはありますが、天候が悪いと進行も遅れますので……」

話を聞きながら、初めてきた手紙の返事が思い出された。

彼女の文章は怒り心頭だったので、あちらの父王が殴り込みを阻止するのが先か、会おうとすることが先なのかアンドレアやエミリオも予測ができないでいる。

(前者だったら、兄上が加勢すると言っていたな)

ちらりと思い出してしまったアンドレアは、いったんそれを脇に置くことにした。

「そうか、まだ少しかかりそう、か……」

通常の国賓来訪より進行の予定自体が遅めなのは、できるだけ騒ぎにならないよう〝彼ら〟を移動させているせいだろう。

今回のルートとなった各地の貴族手たちに事前説明を行い、協力を得て〝彼ら〟を王都ベンゼレアへ。

時間が余分にかかるのだが、そうすることで確実に誤解も解けていっている。

貴族たちは、協力によって信頼されていると喜んだ。恋愛話も大好物で〝第二王女〟を歓迎する姿勢だ。

馬車が通る場所からじわじわと、お祭りのように国民たちの喜びが王都へ向けて広がっていっている空気をアンドレアも感じていた。

そこは、さすが父だと言わざるを得ない。

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