冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
(面倒で、大掛かりで、何人をも巻き込んだお祭りにする――か)

ジェフリルド国王が、臣下を集めた場で語った言葉だった。それは獣人族である国民の気質をよく分かっている彼ならではの策、とも言える。

「兄上が『責任逃れだよね』と笑顔で吐き捨てていたが」

「殿下、アンドレア殿下。恐ろしいので、それ以上は言わないでくださいませ」

あの人だけは敵に回したくないし苦手だ。しかし出世のためにもうまく付き合っていかなければならない。

そう、ストレイのように考えている城の者も多い。

『忠誠心が強い騎士がいたとして、任務失敗と発覚した時に何を考えるか分かるかね?』

あのジェフリルド国王の一言で、王の間に集められた誰もが静かになった。

命を投げ出す覚悟をした者たちのことなら、アンドレアだけでなく城の軍の上層部もよく知っていた。彼らは〝敵〟に耳を貸さず、ただちに秘密を守り抜き、現状がこれ以上悪化しない方法を取る。

『……あの娘が迷いもなく首を掻っ切ると?』

改めて打ち明けられた際、ストレイもピリッとした顔をしていた。

『可能性がゼロ、とは言えないということだよ。聞くに、不運にも初めて護衛仕事になってしまった一件で、あの子は敵の足に食らいつき殴られ続けても決して離さなかったという。馬車に残った姫君まで行かせないように、ね』

『そっ……それは、警護訓練を積んでいた頃の話でしょうか?』

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