冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
『大臣、これは〝なんの訓練も積んでいなかった頃だ〟と、私の信頼する調査員が書いていた』

そこからも、拾われた彼女の強い忠義が窺えた。

戦争で捕虜の自害を完全に止めるのなら、主人を引き合わせる方法でなければ無理だとは、そこにいた全員が知っていた。

今でこそ活躍しているとある将軍も、元々は外国の出身だった。

三週間もの間、鎖に繋がれた状態でも自害し続けようとするその精神力には、アンドレアも上官組も度肝を抜かれたものだ。

戦争は終わった、我ら小国はこの大国に救われ、国名も残ることになったのだと主人の総帥が迎えにきてようやく、彼は自害することを中断した。誠ですか、と意思疎通を見せて初めてアンドレアたちの療養を受け入れた。

(……かわいそうなので、何度か彼女の緊張を解こうとはしたんだけどな)

俺は君が姫ではないことを知っているので、気にしなくていい、と。

けれどミリアは、会話もできそうにないくらい過剰反応した。

改めて臣下が集められた場で、父から話を聞いてもいたアンドレアは咄嗟に口を閉じた。戦士には見えないが、彼女を失う僅かな可能性も恐れた。

あえて名前を呼ばなかったのも、彼が話している相手はあくまで『ミリア』だからだ。

誰もがすでに周知していたことだから、一度だって彼女を『コンスタンシア』とは呼んでいない。離宮の侍女たち『姫』と呼んだ。

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