冷酷な獣人王子に身代わりで嫁いだら、番(つがい)として溺愛されました
日中、近隣国を招いて国の大きな行事が行われた。

それは『今後ともよろしく』と姿勢を示すためのパーティーで、あまり交流のない国々の王侯貴族もここぞとばかりに招かれた。

「続いて、バフルスク王国より代表、第四王子アーサー殿下――」

挨拶のため、玉座の前に入れ代わり立ち代わり出てきては、王侯貴族が挨拶を述べていたところだった。

その名前を呼ばれた第四王子が、進み出てくるなり目を丸くした。

王家に参列していた第一王女コンスタンシアも、アイスブルーの目を見開いた。

向かい合った双方に沈黙が下りた。ガイエンザル国王と王妃も気付いて、護衛席から見守っていたミリアもなんだろうと首を伸ばした。

「……『あーくん』?」

間もなく、コンスタンシアの方からそんな言葉が発せられた。

「そんな……君は、『しあちゃん』かい?」

アーサー王子が、彼女にそう応えた。

コンスタンシアの長年の思い続けていた初恋相手が見つかった瞬間だった。

しかも、それは近隣国バフルスク王国の〝王子〟だ。身分違いの叶わない恋ではなかったのだ。

そう分かってか、コンスタンシアも嬉しそうな笑顔を見せた。相手のアーサー王子も感極まった表情を浮かべた。

二人はそのあとに会場で改めて顔を合わせ、久しぶりの再会に会話の華を咲かせた。アーサー王子の方も、出会った地にたびたび訪れては彼女を探していたという。

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