【完結】秘密の子育てがバレたら、愛で包囲されました。〜その子の父親は、俺だろ?〜


「いいのよ!困った時はお互い様なんだから!」

 中野さんは本当に優しくて、母親みたいな存在だ。

「本当にありがとうございます」

「じゃあ、気を付けてね!」

「はい。失礼します」

 中野さん宅を抜けて五分ほど歩くと、私の住むアパートが見えてくる。
 郵便ポストを確認してから家の中に入る。

「果琳、お昼寝する?」

「ん……」

 眠そうな果琳をベッドに寝かせてから、私は服を着替える。

「はあ……疲れた」

 シングルマザーとして生きていくのは、思ったよりも苦労するし、大変だ。
 子供中心の生活になって、自分のことなんて後回しになる。果琳のために生きていくことが、私の母としての役目だと思っている。

 果琳ななるべく寂しい思いをさせないようにしたいけど、どうしても一人だと寂しい思いをさせてしまうこともある。

 そんな時、父親がいればきっと果琳は悲しまなくて済むのにって、そう思うけど。
 果琳の父親の名前なんて知らないし、どこにいるのかも分からない。そんなこと願うだけムダなんだって思ってる。

 シングルマザーとして生きる道を選んだのは私自身だから、そんなこと望んではいけない。
 望むことすら、きっと許されない。
< 7 / 47 >

この作品をシェア

pagetop