秋恋 〜愛し君へ〜
俺は目の前で起こっている出来事を、どうしても受け入れることができなかった。受け入れたくなかった。でも、受け入れなければならない。気持ちが混乱し、足が勝手に後ずさる。そのままその場を立ち去った。家までの道のりは二人の事ばかり考えていた。一体どんな会話をしているのか、彼女の部屋でタバコを吸いながらくつろぐ笠原さんの姿がはっきりと目に浮かぶ。あのセミダブルベッドの上では…
帰り着いてからもよからぬ想像が頭をよぎり、混乱は全く収まらなかった。部屋に閉じこもり、ベッドの上に仰向けになって天井を見上げた。天井のクロスがスクリーンになってついさっき目にしてしまった場面が現れる。慌てて目を閉じるも同じだった。そんなことの繰り返しで、とうとう夜が明けてしまった。無性に仕事がしたい。そう思ったが、悲しきことにオフだった。俺は気持ちをさっぱりさせたくて、キッチン横にある風呂場へと階段を降りた。
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