もし君の世界から僕だけが消えても。
『姫、僕は君を何よりも大切に思っている。だからどうか僕と…結婚してくれないか』
『もちろんですわ、王子!』
僕の書いた下手っぴな脚本は、クラスのみんなが毎日作業して作った大道具と
役者の人達の提案やアドリブによって、何倍も素敵なものになっていた。
ここは教室で、君はあちこちに指示を出しながら動き回っている。
小道具の方に行ってみたり、音響の方に行ってみたり。
君が誰かと話していると、いつも変な気分になる。
連れていかないで欲しい、と何故か思ってしまって。
だけど君は、人に囲まれたり頼られると瞳をキラキラさせながら楽しそうに笑う。
だから僕もつられて笑って…僕は1人だから、慌てて取り繕って。
今日も同じだ。羨ましくて、だけど嬉しい。そんな気分だ。
僕は彼女の横顔を見ながらふと、誰かの台本が机の上に置いてあるのに気づいた。
寂しい。
そっと手に取って、裏面を確認したりページを軽くめくってみる。
名前は無い。
だけど、誰のものか一瞬でわかった。
ひらり。綺麗に色づいた楓の葉が滑り落ちたから。
栞がわりに葉っぱを挟む人なんて、僕は僕以外にあと1人しか知らない。
楓を拾って元通り台本に挟み直す。
この1ヶ月、君とは本当に色んな話をした。
早朝に集まった時は、君が昔飼っていた金魚の話を。
昼休みに話せた時は、好きな雲について。
夕方。夕焼けと、金木犀の香り。
帰り道は夕飯の話。そして、明日の話。
─いつも明日は、僕の気持ちを無視してやってきた。
今日が地球最後の日ならと願う僕を放り出して、太陽は懲りずに僕の後ろに影を作る。
だから、そんな僕が可哀想に思えたのかもしれない。
あの日から明日は、無条件に君のいる明日を作ってくれた。
そしてそれを知ってか知らずか、君も僕に君のいる明日をくれた。
また明日も一緒にいていいんだ。
そう思えた昨日が、毎日嬉しかった。
「慈?あ、それ私の台本!ここにあったのか〜」
探してなんてなかったんだろう、と僕は思う。
君はたまにそうする癖があるから。
前の僕ならばきっとわからなかった、そんな小さな仕草。目線。口ぶり。
今ならわかる。
今の君だって、僕の気持ちくらいにはもう気づいてるかもしれない。
時が経つにつれて、2人で過ごす時間が増えた。
それは自然とも思えたし、でも不自然にも思えた。
何も無いのに僕の隣にいてくれる時間が初めは不思議で。
何か用かと聞いても、ただ首を振って僕の横に座りこむ君に
僕はそれ以上何も言わず、ただ君と一緒に地球の上で宇宙を回った。
君にしか分からない君の世界の中に、僕はどう映っているのだろう。
そんなことを考えながら、台本を手渡した。
君はまた黙り込んで僕の隣に立っている。
騒音にも快音にも聞こえるサウンドを耳に入れながら、
僕も黙って、君に肩を寄せた。
『もちろんですわ、王子!』
僕の書いた下手っぴな脚本は、クラスのみんなが毎日作業して作った大道具と
役者の人達の提案やアドリブによって、何倍も素敵なものになっていた。
ここは教室で、君はあちこちに指示を出しながら動き回っている。
小道具の方に行ってみたり、音響の方に行ってみたり。
君が誰かと話していると、いつも変な気分になる。
連れていかないで欲しい、と何故か思ってしまって。
だけど君は、人に囲まれたり頼られると瞳をキラキラさせながら楽しそうに笑う。
だから僕もつられて笑って…僕は1人だから、慌てて取り繕って。
今日も同じだ。羨ましくて、だけど嬉しい。そんな気分だ。
僕は彼女の横顔を見ながらふと、誰かの台本が机の上に置いてあるのに気づいた。
寂しい。
そっと手に取って、裏面を確認したりページを軽くめくってみる。
名前は無い。
だけど、誰のものか一瞬でわかった。
ひらり。綺麗に色づいた楓の葉が滑り落ちたから。
栞がわりに葉っぱを挟む人なんて、僕は僕以外にあと1人しか知らない。
楓を拾って元通り台本に挟み直す。
この1ヶ月、君とは本当に色んな話をした。
早朝に集まった時は、君が昔飼っていた金魚の話を。
昼休みに話せた時は、好きな雲について。
夕方。夕焼けと、金木犀の香り。
帰り道は夕飯の話。そして、明日の話。
─いつも明日は、僕の気持ちを無視してやってきた。
今日が地球最後の日ならと願う僕を放り出して、太陽は懲りずに僕の後ろに影を作る。
だから、そんな僕が可哀想に思えたのかもしれない。
あの日から明日は、無条件に君のいる明日を作ってくれた。
そしてそれを知ってか知らずか、君も僕に君のいる明日をくれた。
また明日も一緒にいていいんだ。
そう思えた昨日が、毎日嬉しかった。
「慈?あ、それ私の台本!ここにあったのか〜」
探してなんてなかったんだろう、と僕は思う。
君はたまにそうする癖があるから。
前の僕ならばきっとわからなかった、そんな小さな仕草。目線。口ぶり。
今ならわかる。
今の君だって、僕の気持ちくらいにはもう気づいてるかもしれない。
時が経つにつれて、2人で過ごす時間が増えた。
それは自然とも思えたし、でも不自然にも思えた。
何も無いのに僕の隣にいてくれる時間が初めは不思議で。
何か用かと聞いても、ただ首を振って僕の横に座りこむ君に
僕はそれ以上何も言わず、ただ君と一緒に地球の上で宇宙を回った。
君にしか分からない君の世界の中に、僕はどう映っているのだろう。
そんなことを考えながら、台本を手渡した。
君はまた黙り込んで僕の隣に立っている。
騒音にも快音にも聞こえるサウンドを耳に入れながら、
僕も黙って、君に肩を寄せた。