天秤は愛に傾く ~牙を隠した弁護士は不器用女子を甘やかしたい~

「そういえば総務部の馬場課長、怖い人なんだね。
先日も怒鳴り声聞こえてびっくりしちゃった」
「あー、あれは福永さんが悪いんです。
仕事が出来ないって課長がイライラして。
私達も巻き添えになるから大変なんですよ」

すっごく迷惑です、という須賀の表情に誠は相づちを打ちながらも冷めている。
彼女を生贄にし、誰も戦わない人間達が何を言うのか。

「そっか。
でも以前彼女が仕事しているところ、ちょっと見かけたけど、そうは見えなかったな」
「それはちょっとしか見てないからですよ。
予約をミスったり、色々仕事出来ないから年下の私がカバーすることがあるくらいで」
「なるほどね」

須賀は誠が素子の肩を持つような言葉を言ったことにカチンときた。
知らないからそんなことをいうのか、それとも馬場のことを誠に話したのか。
素子がどれだけ周囲から嫌われ仕事の出来ない女なのか、出来るだけ印象づけたい。

(それにしてもあの人ごときがなんで好印象なの?!
早く芝崎さんには、どうしようもない女だって見限って貰わないと)

「裏で知らないことも多いと思いますよ。
まだ私達もサポートしているからこれで済んでますけど、後々大きな事にならないと良いんですが。
もしそうなったらすぐ芝崎さんに伝えますね、本社も気になるでしょうし」
「うん。そうしてもらえると助かるな」

笑顔で誠は返しながら、自分を売り込んでくる須賀が嫌で仕方が無い。
コンビニで買ってきたプリンを誠は口にする。
あの時素子に買ってきて、半分こしようと言われた同じプリン。
なのにこんなにも美味しくなかっただろうか、このプリンは。
一緒に食事をする相手で食べ物のここまで味が変わるのかと実感する。
また彼女を誘えるのはいつになるだろうと思いながら、誠は適当に須賀が話し続ける言葉に適当に相づちを打っていた。
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