冷徹上司の過剰な愛
「母さんなら大丈夫。必ず目を覚ますよ。」



お父さんのその言葉だけが今は心の支え。


そうだよね。お母さんなら必ず目を覚ますよね…?信じていいよね?お母さん。


両手でお母さんの手を握り締めると、そう祈った。



「母さんには苦労かけてきたし、今はゆっくり寝かせてあげようと思ってる。その時がくるまであのんも見守ってあげててほしい。」


「…うん。そうだね。」



わたしの中のお母さんはいつも忙(せわ)しくしていた記憶がある。休んでる姿が思い浮かべられないくらい。


だから、いつ寝てるんだろう?って子供ながらに不思議に思っていたこともある。


こうして静かに眠るお母さんに違和感があるのはそういうのがあるからかもしれない。



「あのん、会社は良かったのか?今日は仕事始めだっただろ?」


「会社なら大丈夫だよ。それよりお父さんも少し休んだら?お母さんにはわたしがついてるから。家に帰って休んできてよ。」



お父さんの顔は疲れきってて、とても見ていられない。休める時に休んでほしい。


お父さんまで倒れられたら困るもん。



「じゃ少し抜ける。何かあったらすぐに電話して。」


「うん。わかった。」
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