冷徹上司の過剰な愛
…あり得ない。難波さんはわたしを置いて行く気だもん。もちろんそれは仕方がないこと。


だってわたしにも仕事があるわけだし。それに、やっと難波さんに認められて一人前になったんだもん。


化粧道具をポーチに雑に突っ込むと、オフィスへと戻った。すると、勢いよく舞子が駆け寄って来るのが見え、思わず構える。



「あのん大変だよ!難波さん早退しちゃった!」


「え?どうして?」


「体調悪いんだって。転勤の件で仕事詰めてたみたい。それに引き継ぎの件とかも同時進行でやってたって。」


「………。」



なんとも難波さんらしい。


そう分かっていたはずなのに、わたしは難波さんのことを気にも掛けてなかった。



「すごくつらそうだったよ。行ってあげたら?」


「でもわたしが行っても何も出来ないし…。」


「何もしなくていいんじゃない?今は側に居てあげればいいんだよ。ただ側に居るだけで。」


「………。」



側に居るだけ…?わたしはどうしたいんだろう?


わたしは……、



「わたしも側に居たい。」



気づくとオフィスを飛び出していた。
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