星空なら、うまく話せるのに

 私は再び向かいの珈琲店へ視線を向けた。

 ここは、おばあちゃんの想いが詰まった大切な店なんだ。そのおばあちゃんの代から来てくれているお客さんだって、たくさんいる。

 このままこの店がなくなってしまったら、おばあちゃんの探し求めている人を見つけられなくなってします。

 あの本に描かれていたように、叶えられず想いを残し、それを永遠に探し続け輪廻の輪をめぐり続けるような、そんな繰り返す苦しい想いを抱え生きていくことになる。


「この店を立ち退くことは出来ません! たとえ老朽化で取り壊しになっても、ここで、この場所でずっと紅茶店を続けていくつもりです! どんなことをしても!」


 また、私はここで逃げ出すわけにはいかないんだ。

 たとえサンタさんと永遠の別れになったとしても。


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