夫婦間不純ルール
「親睦会? 珍しいな、雫がそういった集まりに参加するのは。君はそういうのがあまり得意ではないだろう?」
「……そう、ね」
岳紘さんの中で私はいつの間にか人の集まりが苦手だと言うことになっていたらしい。本当はむしろ逆で、賑やかな雰囲気も騒がしいくらいの笑い声も好きなのだけれど。
真面目で落ち着いた雰囲気の岳紘さんに釣り合うように、大人の女性に見えるよう頑張ってきたつもりだったけれどそんなふうに思われていたなんて。これまでの自分の努力がまるで伝わってなかったのだと分かり、少しだけ悲しくなった。
「お世話になった先輩の送別会でもあるの、やっぱりちゃんと今までのお礼も言いたいし……」
「雫が参加したければ参加するといい、俺の夕飯くらいならどうにだって出来るし気にしなくていいから」
嫌な顔どころか表情ひとつ変えないで岳紘さんはそう言った。気にしてくれるかもなんて淡い期待しなければよかった、結局また私一人が心に傷を負うだけ。
周りからすれば理解ある夫に見えるのかもしれないが、本当は彼が私にそれほど興味がないだけにすぎない。私は……そうではないのに。
「ありがとう。じゃあその日は遅くなると思う、岳紘さんは先に休んでてくれていいから」
「いや、雫が帰ってくるまで起きて待ってる」
「……え?」