夫婦間不純ルール
「麻実ちゃん、大丈夫?」
いつの間にか目の前には心配そうに私を見つめる久我さんがいた。どうやら私は岳紘さんのことをばかりを考えてしまい、周りの話を聞き流してしまっていたようだ。焦って何か言わなければと思っていると、久我さんが私に水の入ったグラスを渡して……
「ちょっとハイペースで飲ませてしまったかも、麻美ちゃんが来てくれて嬉しくて。責任持って私が彼女を見てるから、みんなは楽しんでて。さ、麻美ちゃんは外で風にでもあたりましょう?」
「あ、はい」
実際はそれほど酔ってはいなかったが、この状況で久我さんの言葉は有り難く彼女の言う通り具合の悪いふりをして店の外に出た。少し火照った身体に、冷たい夜風が気持ち良い。
「すみません、迷惑をかけちゃって。でも……助かりました。ちょっとぼーっと考え事してしまってたので」
「そんなことは気にしなくていいのよ、さっきの麻美ちゃんの様子を見てて放っておけるわけないもの」
よほど酷い顔をしていたのだろうか? 久我さんはまだ心配で仕方がないという表情のまま。私もそんな彼女の様子に気のせいでしょう、と言えないでいた。気を使わせてしまい申し訳ないと言う気持ちはもちろんある、でも正直なところ誰かにこの悩みに気づいて欲しかったのかもしれない。
私と岳紘さんの二人だけのルールを話せるわけじゃない、それでもただこうして傍にいて支えようとしてくれている久我さんの心遣いが嬉しかったのだ。