幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない
私が苦笑いで項垂れると、彼女は楽しそうに声を上げて笑った。

「いいじゃないの〜。私も美人秘書、なんて呼ばれてみたいわあ」

「佐原さんはお綺麗です。お肌とか、いつもどんなお手入れをされているのか気になっていました」

「やーだ、四宮ちゃんったら! おだてても何も出ないわよ!」

私の腕をバシンっと叩いて頬に手をやる彼女は、冗談抜きで年齢より若く見える。
その秘訣をいつか教えてもらおうと目論んでいるのも本当だ。

社長室の重厚な扉をノックすると、「どうぞ」と声がする。
佐原さんが先に、私はあとに続いて社長室に入ると、スリーピースを完璧に着こなした貴晴さんが映る。

「失礼致します。おはようございます、社長。改めまして、秘書を務めさせていただきます佐原です」

「秘書室長の四宮です。 本日からよろしくお願い致します」

「わざわざありがとう。こちらこそ、よろしくお願いします」

丁寧な所作で頭を下げ、顔を上げると、彼は穏やかに微笑む。
仕事モードの貴晴さんはいつにも増してクールだ。
私たちの面識は、仕事上での数回程度という体だ。
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