幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない
就任後秘書課ではしばらく称揚ムードが続いた。
総務部での私は、“敏腕美人秘書”なんて恥ずかしい呼び名もあるらしいのを、つい最近同期に聞いた時は、もっと地味に働けばよかったとちょっと後悔もした。

しかし、責任が伴う以上仕事は完璧にこなす。
その姿勢がまた、私の株を上げているというのは、気づかない振りをしようと決めた。


「それでは皆さん、本日もよろしくお願いします」

朝礼を締めくくる挨拶を皮切りに、秘書課の一日が始まる。

今日は貴晴さんの社長就任後初の出社日なので、社長秘書を担当するベテランの佐原さんと、私は室長として社長とのコンタクトから始まる。

佐原さんのキャリア的には、私は足元にも及ばない。
彼女の他にも優秀な秘書は何人もいる中私が室長に推薦されたのには、どうやら若手の育成を見込んでのことらしい。

「いやあ、まさかこの歳になって社長秘書を担当するとは思わなかったわ」

佐原さんが緊張しちゃう、なんて零すので、私は笑って言った。

「佐原さんほどの適任はいませんよ。私もいろいろと助けてもらっていますし」

私が言うと、佐原さんはにっと笑って言う。

「敏腕美人秘書さんのお役に立てて光栄です」

「その呼び方はやめてください…」
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