幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない
貴晴さんの顔は、涙と鼻水でぐしゃくじゃなんだと思う。
私は彼のすすり声が落ち着くまで、背中をさすりながら噛み締める。

ずっと恋焦がれた旦那様。新しい家族ができて、彼はちょっと過保護で子ども想いな優しい父親になるのだろう。

「誰がなんと言おうと、この子には好きなことをやらせてやろう。 一椛と子どもの幸せは、俺が守る」

思い返すのはおじい様のこと。
この子の人生に、レールを引かない。
進みたい道を選んでほしいから。そのためにできることは、私も貴晴さんもなんだってする。

「じゃあ私は、貴晴さんを幸せにするね」

はにかむように笑うと、貴晴さんが顔を上げて優しく微笑んだ。

「俺を選んでくれて、本当にありがとう」

「こちらこそ。私を好きになってくれて、ありがとう」

芽生えたばかりの小さな命に伝えてあげよう。
お父さんはあなたの存在を、目を真っ赤にして、泣いて喜んだんだよ。って。

私たちは見つめ合い、ここが病院の送迎レーンなのを思い出して身体を離した。

手を繋いで帰る。

これから始まるのは、穏やかで幸福な、何気ない日常だ。






おわり




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