幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない
両肩に置かれた手にそっと触れて貴晴さんを見上げた。

胸はドキドキしたままだけど、それは不安じゃなくて、気恥しいような、嬉しいようなくすぐったい感情のせい。

「赤ちゃん、いるんだって」

静かな空気が流れる。貴晴さんは固まって、表情が動かない。

…あれ? なに、この反応。
いや、私の説明が足りなすぎたのだ。
緊張していて、なんだか自分でもよくわからなくて、ふわふわしていた。

「あのね、私の最近の体調不良は、妊娠してたからだったの。さっき検査してもらって、たくさん心配かけてごめんね」

貴晴さんが動き出すまで、その間30秒。

「そうか。赤ちゃん」

えぇ、それだけ?反応薄くない!?

「も〜。こんな時までクールに決めないでよ。パパだよ。貴晴さんがパパ。 嬉しくない?」

言ってから、貴晴さんの瞳が赤くなっているのに気づく。
すると、優しく腕が回されて、私は貴晴さんの胸にすっぽり収まった。

「嬉しい。嬉しいに決まってる。俺たちの赤ちゃん。一椛に似たら絶対美形。女の子だったら、嫁にやれないな」

「ふふ。気が早いなぁ。男の子だったら、貴晴さんみたいに優しくて、頼りになるイケメン。きっとモテモテだね」
< 125 / 126 >

この作品をシェア

pagetop