幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない
私の必死さに、貴晴さんが吹き出す。

「ごめんごめん。しかし、言い出したやつは天才だよな。一椛美人だし、よくわかってる」

「はいはい、ありがとうございます〜」

私は火照った頬を手で仰ぎながら、お世辞だと受け取って適当に返す。
けれど、貴晴さんは続ける。

「まあ、俺以外の男に一椛のこと美人呼ばわりさせんのは気に入らないけど」

「な、に言ってるの。もー、貴晴さん、からかってるでしょ」

「いーや、結構本気。一椛を褒めていいのは俺だけ。可愛がっていいのも、からかっていいのもな」

赤信号で車が止まったのをいいことに、貴晴さんがこっちを向いてにやっと笑う。
耳まで赤くなっているだろう私に、「素直かよ」なんて言って頭に手を乗せてくる。

「っ…そういうこと、言う人だったっけ…」

俯いて、小さく呟いた私の声は、たぶん彼には聞こえていない。

私、貴晴さんに、甘やかされているの?
彼がスイーツより甘くて苦しい。
胸がいっぱいすぎて、食事なんて喉を通らないんじゃないかってくらい。

これは、婚約者に対するリップサービスなのかもしれない。
でももしかしたら、本当に私を見てくれているのかもって、期待してもいいだろうか。
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