幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない
それから5年後のことだった。

私と貴晴さんに、婚約の話が持ち上がったのは。

親も子もよく知るもの同士が一緒になることは、双方の会社の安泰にも良い繋がりだ。

断ることだってできた。
けれど子どもな私は、貴晴さんの隣が約束された未来を自ら遠ざけることができなかった。

それで、シンガポールでの仕事が落ち着いた彼の帰国が決まり、正式に婚約も決まったのが最近の話。

私は貴晴さんの優しさに甘えてばかりだ。
親が決めた婚約者という立場で、彼をしばりつけているようなもの。

たまに思う。どうして彼は、好きな人を置いて、私との結婚を承諾したのだろう。
仕事もできてお父様からの信頼も厚く、しかもイケメンだし彼ほどの人にふさわしい人は他にもいるはず。
それこそ、シンガポールの彼女との結婚もできただろう。

それとも彼でも、お父様が決めた結婚は断れなかったのだろうか。

自分で選んだくせに、貴晴さんとの関係にはいつも不安が付きまとっていた。
けれどそれは表に出さない。

彼が私の隣で笑ってくれる限りは、私も笑っていようと決めたのだから。
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