幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない
「あ〜! 貴晴さーん、ただいまぁ」

「一椛? ……酔っているのか」

モニター越しでもわかる。頬を赤く染め、上機嫌な笑顔を湛える彼女は、完全に酔っ払っている。

鍵を開けて入ってこいというには心配で、エントランスまで降りた。

「一椛! どうしたんだ、そんなに飲むなんて珍しいじゃないか」

「えへぇ」

なんだその照れたようなふやけた笑いは。何も照れるようなことは言っていない。酔っぱらいの扱いは難しいな。しかもこいつは酔わせちゃいけないタイプではないか。
よくここまで自分で帰ってきたものだ。本当に。

と思ったら、横から怒ったような声が聞こえた。

「ちょっと、さっきから私のこと無視しないでちょうだいよ」

「アン! おまえも一緒だったのか」

彼女はあからさまにバツの悪そうな顔をする。

「うっ… そうよ。私から誘ったの。そしたらあなたの奥さん、飲むわ飲むわ…大変だったんだから!」

「そんなに見境なく飲むようなやつじゃないんだけどな」

アンにじとっとした視線を向けた。

昼間、佐原と話したことを思い出す。
当たりだな。一椛の元気のなさの原因は、間違いなくこいつだ。
< 59 / 126 >

この作品をシェア

pagetop