幼馴染は、政略妻を愛したくてしょうがない
号外スクープ、なんて記事が出るんじゃないかという勢いで、しばらく社内はその話で持ち切りだった。

仕事しようよ、仕事。他人の熱愛発覚を楽しんでないでさあ…。

用があって下のフロアに降りれば、遠目でコソコソ言う人もいれば、ド直球に聞いてくる人もいる。

「四宮さんですか? 社長と結婚してたって、本当ですか!?」

ギラギラと瞳を閃かせている。怖いって。
でも、こうしてぶつかってきてくれるほうがまだいい。潔が良い。
コソコソと噂話をされるのは、あまり気分が良いものではない。


人の噂もなんとやらで、まだ貴晴さんと歩くと、仕事の話をしていても視線を感じるものの、落ち着きを取り戻しつつあった。

よかった。特に大きな事件もなく、収束した。


社長室で社長と話していたら、急に勢いよくドアが開いた。

「タカハル!」

現れたのはアンさんだ。
ふわふわ揺れていた髪は、きちっとまとめあげている。

「アン、アポなし訪問とはなにごとだ」

貴晴さんの迷惑そうな声色に怯むことなく、アンさんは青い瞳を揺らして切羽詰まったように言う。

「お父様が、倒れたって」

「ブライア社長が? 容態は」

「わからない。私も今、秘書に連絡をもらったばかりなの」

「四宮、飛行機の手配を頼めるか」

「済んでいます。 詳細はメールで送りますので、タクシーで空港へ向かってください」

「ありがとう、助かる」

貴晴さんの笑顔には焦りが滲んでいた。
状況によっては、貴晴さんもシンガポールに行くことになるかもしれない。

ふたりを見送り、私はスケジュールの調整のため、オフィスへ戻った。
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