すずらんに幸あれ!
「ほお…。ならば今ここで呼び出していただいてもよろしいでしょうか」
男はじりっ…と一歩私の方へと歩み寄り、反対に私は後ろへと後ずさる。
「ほら早く」と急かしてきて、頭の中は混乱状態に陥った。
どうしたものか、と目を泳がせていると、正門から同じ学校の生徒が出てくるのが見えた。
男の子だ。
背が高くて顔立ちも整っている。
大人っぽい見た目をしているから、おそらく3年生だろう。
「あっ、あ〜〜〜〜っ!!!」
心の中で意を決した私は、思い切って3年生らしき男の子の元へ駆け寄った。
「ぐ、ぐーぜんですねーっ!!よかったら一緒に帰りませんかっ!?」
「…あ?」
怪訝な表情をする男の子の腕を乱暴に掴み、早足で歩き出す。
「触んな。誰だよおまえ」
「いや、ほんっとにごめんなさい…!ちょっと知り合いのフリしてほしいです…!!」
しつこい男の耳に届かないよう小声で伝え、嫌そうな態度全開の男の子の手を引いて、そそくさとこの場を去った。
「……よしっ」
後ろを振り向いて、男が追いかけてきていないことを確認し、安堵のため息をつく。
なんとか誤魔化せた(?)ようだ。