すずらんに幸あれ!

真剣な表情といい、男前なのに言動が少しかっこ悪いといい、そんな彼に一周回って可笑しくなってきて、私は思わず吹き出してしまった。

笑い出す私を見てすずくんは「何笑ってんだよ」と不満げに言う。


「だって…んふっ…。ま、まがおで……すまほとりもこんまちがえたって……あははははっ!!」


だめだ、笑いを堪えそうにない。

涙まで出てきた。


「…おい、勘違いしてるかもしんねーけど、わざと間違えただけだからな」

「…〜〜っ、んボフォッ…!!!」


ただ単に間違えただけだというのに、「わざと」だなんて言い出すのでさらに吹き出してしまった。

すずくん、スマホを間違えてわざとテレビのリモコンを持ってくるなんて、無理がありすぎるよ。

男の子の前でお腹を抱えるくらいに笑ったのは、初めてだ。

それに、小鳥遊 鈴という男は、案外面白い人なのかもしれない。

無愛想で、生意気で、少し近寄りがたい雰囲気だが、もう少し私から歩み寄ってみようと思った。


帰宅後、すずくんのスマホはリビングのテーブルの上に置いてあり、メッセージアプリを開くと、50件以上の通知が送られていたとのことだった────…。

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