丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう~After Story~
佐木の煩悩
“佐木さんは、何をしてる時が幸せですか?”


佐木には、自由がない。
しかしそれは、佐木自身が望んでいることだ。

凱吾と“特に鈴嶺”の世話をすることに、生き甲斐を感じている。

身寄りのない佐木を、鈴嶺の両親が引き取り育てた。
鈴嶺の執事になることも、佐木が望んだことだ。


―――――――――――― ―――――――………………………

佐木のスマホのアラーム音が響く、リビング。
取ってアラームを切り、鈴嶺に電話をかけた。

佐木「お嬢様!?どちらへ!?
――――――公園?はい、はい。
しかし、お一人では危ないです!
私もお供しますので、そこでお待ちを!」
慌てて家を出て、エレベーターに乗り込んだ。

外出先でも――――――

佐木「では、お嬢様。
絶対に、お一人でお店から出てはダメですよ?
いいですね?」
念押しして、車に戻る。

そして凱吾からは、何の前触れもなく連絡がくる――――――

佐木「はい」
凱吾『今日は外食することにした。
20分後に出るから』
佐木「はい、かしこまりました。
車を回します」

いつも、何処にいても、常に凱吾と鈴嶺のことを考えて気遣っている。

でも佐木にとっては、幸せなことだ。

佐木が嫌なのは―――――二人に(特に鈴嶺)必要とされないことだ。

“鈴嶺がマンションから出ると、佐木にアラームが来る”
これは―――――凱吾などの同行者がいても、当然鳴る。

アラームが鳴り、鈴嶺に電話をかける。

佐木「お嬢様!どちらへ!?」
鈴嶺『あ、ちょっとお散歩するの。
大丈夫だよ!凱くんと一緒だから。
――――あ、ちょっと待ってね、凱くんに代わるね!』
凱吾『―――――少し、この辺を散歩するだけだ。
お前は必要ない』

佐木にとっては、これは地獄だ。
“いらない”と言われているようで………

そして、もう一つ。
佐木にとっての、苦痛がある――――――


凱吾と鈴嶺のデートも、佐木が当然のように傍についていく。

買い物の荷物持ちや、映画など施設へ行った際のチケット購入など…
二人の身の回りのことを、全て行う。

これは、佐木にとっての幸せ。

だが車内での、凱吾と鈴嶺の甘い雰囲気を目の当たりにしている時間は、苦痛で堪らなくなるのだ。
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