丘の上の大きな桜の木の下で、また会おう~After Story~
それから、佐木の運転で杏樹の母のクラブに向かった。

今日は貸し切りにし、志田も一緒に六人で凱吾と鈴嶺の結婚の祝いをする。
(鈴嶺が“杏樹の恋人として”志田に会いたいと言ったから)

クラブ前で、ゆっくり止まるリムジン。

佐木が運転席から下りると、志田がいた。
志田「おめでとうございます!」

佐木「あ、志田様。
ありがとうございます!
すみません、遅くなってしまって…」

志田「いいえ!
お誘いいただいて、光栄です。
杏の“親友”の結婚祝いに俺のような人間を呼んでいただけるなんて!」
佐木「あ、いえ…あの……」

志田「フフ…」
佐木「え?」

志田「“全部”受け止めますよ」
佐木「え?」

志田「俺を呼んでくれたのは、鈴嶺ちゃん“だけ”ですよね?」

佐木「ご存じだったんですか?」

志田「はい。
だろうなと思ってました。
でも、大丈夫です。
四人からの言葉は“全て”受け入れます。
杏の大切な“親友達”なので」

佐木「さすが、杏樹様の恋人だ」

見据える志田に、佐木は微笑んだ。

宗匠「おい、佐木!!
お前さぁ、早く開けろよ!」

そこに待ちくたびれた宗匠が、自分でドアを開け出てきた。

佐木「はっ!申し訳ありません!」

慌ててドアを開け、紀信、杏樹、凱吾が降りた。
そして凱吾が、鈴嶺に手を差し出す。

凱吾「鈴嶺、おいで?」
鈴嶺「うん!」
今度は裾に気を付け、ゆっくり降りた鈴嶺。
そして、凱吾に抱きついた。

凱吾「大丈夫?」
鈴嶺「うん!ありがとう!」

凱吾「よし、行こ?」
鈴嶺「うん!
……………ん?あ!志田さん!」

志田「結婚おめでとう!
今日は、ありがとう!大切な祝いに呼んでくれて!
フフ…可愛い花嫁だな!
まさに、姫だ(笑)」

鈴嶺「そんな…/////
志田さんこそ、お忙しいところをわざわざありがとうございます!
あ、凱くん。
凱くんからも、ちゃんとお礼を━━━━━━」
凱吾「は?言ったよな?鈴嶺。
僕は認めないって!」

鈴嶺「凱くん!」
凱吾「何?」

鈴嶺「そんなこと、言わないで!」
凱吾「だったら、鈴嶺はいいと思ってるの?
こいつは、既婚者だよ?」

鈴嶺「それは……」

志田「鈴嶺ちゃん。いいんだよ?
凱吾くん…だっけ?
凱吾くんの言う通りだから」

佐木「凱吾様、今日はお祝いの日です。
ここは、堪えてください。
“鈴嶺お嬢様のために”」

凱吾「………わかった…」
佐木が耳打ちし、凱吾は不本意な顔で頷いた。
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