激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 それなのに、なんで私のせいだと思えるんだろう。

 なんと説明すればいいのか迷っているうちに、まわりの注目が集まっているのに気づいた。

 このビルはうちの会社だけじゃなく、いろいろなオフィスが入っている複合ビルだ。
 エントランスにはたくさんの人が出入りする。

 そんな場所でこんなみにくい言い合いをするのは迷惑だ。

「野口さんちょっと声を抑えて。話があるなら場所を変えよう?」

 私がそう言うと、彼女の視線がするどくなる。

「またそうやっていい子ぶって、むかつく!」

 落ち着いてもらおうと思ったのに、逆効果になってしまったようだ。

「あんたみたいなまじめでつまらない女、振られて当然なのよ。私がいなくたって、近いうちに康介さんに飽きられて捨てられてたに決まってる!」
「……そうかもしれないね」

 私と野口さんはまったく違う。

 彼女が身に着けているようなかわいらしいデザインの服やピンク色のパンプスは私には似合わないし、語尾が上がるかわいらしい口調で甘えることなんてできない。

 頼まれたことをうまく断るのも苦手だし、人に気を使ってばかりだし……。

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