激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 こんな自分がいやになるけれど、だからって彼女に言い返しても仕方ない。

 私のそんな態度が余計癇に障ったのか、野口さんはさらに声を張り上げた。

「なによそれ! なんでそんな涼しい顔をしてお高く留まってられるわけ? ベッドの中で男をよろこばせることもできない、つまんない女のくせに!」

 投げつけられた言葉が胸に突き刺さる。

 こんなたくさんの人がいる中で、こんな屈辱的なことを言われるなんて……。

 悔しさがこみあげてきたけれど、反論する言葉は思いつかなかった。
 だって実際、私は康介を満足させることができなかったから。

 付き合っていた一年間、康介はずっとつまらないと思いながら私を抱いてきたんだろう。
 その事実に女としてのプライドがずたずたに傷つけられ、私は黙ってうつむいた。

「康介さんは言ってたわよ。セックスの最中、声も出さないし表情もかわらないし、反応がなさすぎて感じているかどうかもわからない。人形を抱いているみたいで退屈でしかなかったって」

 エントランスを行きかう人たちの視線が私に集まるのがわかった。
 屈辱と羞恥で足が震える。

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