激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 けれどその目線はぞくりとするほど冷たかった。

「い、一体なんなのよ! あんたには関係ないでしょっ?」

 野口さんは焦りの表情を浮かべながらこちらを睨む。
 亮一さんはその視線を受け止め口を開いた。

「俺は日菜子の夫だ」
「ちょっと、亮一さん……!」

 堂々と言い放った彼に、私は慌てて口留めしようとする。
 いろいろ詮索されそうだから、会社の人には結婚したことを内緒にするつもりだったのに。

「は? 夫?」

 野口さんも目を丸くして私たちを見る。

 驚くのも当然だ。
 だって康介と別れたのはたった二日前のことなのに。

「君がくだらない男を寝取ってくれたおかげで、俺はずっと好きだった彼女を手に入れることができた。礼を言う」

 亮一さんは私を腕の中に抱きしめながらそう言った。
 私のために嘘をついてくれているんだ。守られていることを実感して胸がいっぱいになった。

 彼は私を抱き寄せたまま野口さんを見据える。その視線にするどさが増す。

「――だが、今後君が彼女を侮辱することがあれば、そのときは容赦なく訴える。誰かを傷つければその代償は必ず自分に返ってくる。覚悟しておけ」
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