激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
「日菜子?」

 あきらかな動揺が浮かぶ声で私の名前を呼ぶ。

 ドアが開き、上半身裸の康介がこちらを見る。
 その奥には、シーツで体を隠した野口さんがいた。


 生々しい現場をこの目で見て、絶望感に襲われる。

「く、来るなら来るって連絡しろよ……っ!」

 康介は焦りを隠すように乱暴に言った。

 私はメッセージを送ったし、ちゃんとインターフォンも鳴らしたのに。
 気づかなかったのは康介のほうだ。

 その音に気づかないくらい、夢中で抱き合っていたんだろう。

 叫びだしたい衝動にかられながらも、必死に冷静になろうと奥歯を強くかみしめる。

「康介、これはどういうこと……?」
「どういうことって。見てわかりません?」

 私の質問に、康介ではなく野口さんが答えた。

「ほんと鈍いですねー。康介さんはもう早川さんのことなんて好きじゃないんですよ」
「そんな」
「康介さん言ってましたよ。あんなつまんない女と早く別れたいって」

 康介の顔を見ると、気まずそうに眼をそらされた。
 真実なんだと察して、ショックを受ける。

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