激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 すぐに体を離しおそるおそる亮一さんを見上げた。

「こ、これでいいですか?」

 私がたずねると、彼は「ありがとう」と微笑む。

「でも唇じゃないのは残念だな」
「こんなひと目のあるところで、唇にキスなんてできません……!」

 頬にキスだって、ものすごい勇気が必要だったのに。

「次に日菜子に会えるのは一カ月後か。寂しいな」
「ちゃんと行きますから、アメリカで待っていてくださいね」
「お利口に待っていたら、ご褒美をくれるか?」
「ご褒美?」

 なんだろうと首をかしげると、亮一さんがにこりと笑う。

「次は頬じゃなくて、ここにキスがほしい」

 形のいい唇を指さす彼を見て、その色っぽさに頭に血がのぼった。

「もう……っ!」
「はは。ものすごく真っ赤になってる。俺の妻は本当にかわいいな」
「からかわないでください!」
「じゃあ、一カ月後に唇にキスしてもらえるのを楽しみに待っている」
「そんなこと言われたら、一カ月間ずっと亮一さんのことばかり考えちゃうじゃないですか!」

 頬を熱くしながら抗議する私を見て、彼は優しい笑みを浮かべる。
 そして体をかがめ耳もとに顔を寄せた。

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