激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
「わざとだよ。離れている間、かわいい妻が俺のことを忘れないように」

 そうささやき、ちゅっと音をたてて耳たぶにキスをする。

「ひゃ……っ」
「じゃあ、アメリカで」

 私が目を丸くしている間に、彼はタクシーに乗り込む。
 亮一さんが窓越しに私に向かって軽く手を上げると、タクシーは発車した。

 そのタクシーを見送りながら、私は胸をぎゅっと抑えた。


 亮一さんと一緒にいると、心臓が壊れそうなくらいドキドキしっぱなしだ。
 アメリカでの彼との生活が楽しみだけど、同じくらい不安になった。



 


 翌日出社すると、昨日以上に私にみんなの注目が集まった。

 けれど昨日とちがうのは、その視線に同情の色がないこと。

 どうやらエントランスでのやりとりが知れ渡っているようだ。

 たくさんの人が行きかう中であんなやりとりをしていたら、噂になってしまうのは仕方ないけど……。

「日菜子の話で、会社中もちきりよ」

 聡美にそう言われ、頭を抱える。

「帰り際に野口さんに絡まれてたら、ものすごいイケメンが助けに来てくれたんでしょう? それが例の旦那様?」
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