激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
「あることないこと言いふらしたせいで、部長から注意を受けたらしいわよ。社内の風紀を乱すなって、異動もちらつかせられたみたい」
「そうなんだ……」

 社内恋愛がこじれたからといって上司から注意されることはないけれど、それを社内に持ち込み仕事に支障をきたすようなら話は別だ。

 一緒になって陰口をたたき続ければ自分の立場も悪くなると思ったのか、昨日まで彼女を取り巻いていた友人たちは彼女と距離を置いたようだ。

「ざまぁみろだね」

 ふふんと笑う聡美に、曖昧に相づちをうつ。

 自分が傷つけられたからって、相手も傷つけたかったわけじゃない。
 そんなことを言ったら、きっと野口さんはまたいい子ぶってと怒るだろうけど。

「早川さん、ちょっといいか」

 部長から声をかけられ「はい」と立ち上がる。


 まわりから聞かれないようにという配慮か、会議室に案内された。

 このタイミングで呼び出されたのは、私と野口さんの諍いのことだろうと思い、「お騒がせしてすみませんでした」と頭を下げる。

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