激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
「いや。早川さんは謝る必要ないよ。一方的に同僚を貶める話を広めて社内の空気を悪くした野口さんにはお灸をすえたけどね」

 社内でのトラブルは注意をするけど、プライベートの人間関係にはタッチしないということだろう。

「今日呼んだのは、正社員の話を進めてもいいかなという確認だよ」
「申し訳ありません。ありがたいお話なんですが……」
「やっぱり、契約更新はせず辞めてしまうのかい?」

 残念そうな顔をする部長に、「すみません」と頭を下げた。
 せっかく私を正社員にと押してくれた部長の優しさを裏切るのが心苦しい。

「その決断は今回のことが原因かい?」

 人事には結婚したことを報告しなければいけないから、部長にも話しておこうと思い、「それもあるんですが」と切り出す。

「結婚をしてアメリカに行く予定なんです」

 私の話を聞いた部長は、「ハイスペックなイケメン男性に求婚されたという噂は本当なんだね」とゆかいそうに笑った。

「部長まで知っているんですね……」

 まぁ、エントランスであんなに注目を集めたんだから、しかたないのかもしれないけど。

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