激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 相変わらず野口さんからはうらみがこもった視線を向けられているけれど、直接私に話しかけてくることはないし、出張から戻って来た康介も、極力私とは目を合わせず仕事上必要な会話をするだけだった。

 康介と野口さんはうまくいかず結局別れたらしいという噂を耳にしたけれど、もう私には関係ないことだと聞き流した。

 ふたりとは関りをもたないまま、仕事をやめることができそうだ。
 ほっと胸をなでおろす。





『なにも問題がなくてよかった』


 電話の向こうで安心したように息を吐いたのは、ワシントンにいる亮一さんだ。

『元カレに声をかけられても相手にするなよ』

 いつものように言われ、「大丈夫ですよ」と苦笑する。

 康介はよりを戻したがるどころか私をさけているようだから、亮一さんが心配する必要はまったくない。

「心配してくれてありがとうございます」

 最近は仕事を終えてから、こうやって彼と電話をするのが日課になっていた。



 こちらは夜の七時過ぎ。
 亮一さんがいるワシントンとは十三時間の時差があり、向こうはまだ早朝だ。

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