激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
「亮一さんはこれから仕事ですよね。朝の忙しい時間にすみません」
『いや。俺が日菜子の声を聞きたいだけだから』

 優しい声色で言われ、胸のあたりがきゅうっと音をたてる。

『早く日菜子に会いたいよ。君がアメリカに来てくれる日が待ち遠しい』

 こんな甘いセリフを自然に言えるなんて、本当にずるいと思う。

「ありがとうございます」

 照れくささを隠すためにぎこちなくお礼を言うと、『日菜子は?』と問いかけられた。

「え?」
『日菜子は俺に会いたくない?』

 私をためすような質問。
 電話越しに響く色っぽい声色に鼓動が速くなる。

「わ、私も、会いたいです」
 平静を装おうとしたのに、声が裏返ってしまった。
 私の動揺が伝わったのか、亮一さんが笑みを含んだ吐息を漏らす。

『今、日菜子は真っ赤な顔をしているんだろうな』

 言い当てられ言葉につまる。
 鏡に映った私の頬は、彼の言う通り真っ赤になっていた。

「なんでわかるんですか!」
『本当にかわいいな。今すぐ飛行機に乗って抱きしめに行けたらいいのに』
「もう! からかわないでください」
『からかってないよ。全部本心だ』

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