激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 くすくすと柔らかい笑い声を聞きながら、私もふふっと笑ってしまった。

「亮一さん、そろそろ電話を切らなきゃですね」
『そうだな。名残惜しいけど、仕事の準備をするよ』
「今日もお仕事がんばってください」
『あぁ。おやすみ日菜子』

 これから一日がはじまる国と、夜を迎える国。
 遠く離れた場所からそれぞれの挨拶をして通話を終える。

 私は画面が暗くなったスマホを持ったまま、ベッドに倒れ込んだ。

 ぎゅっと胸にスマホを抱きしめ、亮一さんとの会話をふりかえる。
 胸がドキドキと音をたてていた。

 彼と電話をしたあとは、いつもこうだ。

 なんだか地に足がついていないみたいにふわふわしている。
 居心地がわるいのに、どこか幸せな気分で……。

 そんな落ち着かない気分のときは、聡美からの忠告を心の中で繰り返す。

『二年後離婚するって決まっているんだから、相手を好きにならないように気をつけないとね。日菜子だけが彼を好きになっちゃったら、別れるときつらいじゃない』

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