激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 本当は会社をやめてすぐにアメリカに行く予定だったけれど、外交旅券の発行の関係で少し遅れることになった。

 亮一さんが『あと二週間も日菜子に会えないなんて』と残念がっていたのを思い出す。

「結婚したのに遠距離だったから、旦那様に会うのが待ち遠しいでしょ」

 にやにや笑う聡美に問われ、少し照れてしまう。

「そうだね。ワシントンに行ったらあちこち案内してくれるって言っていたから楽しみ」
「いいなぁ。毎日観光気分で楽しそう」
「でも、みんな早川さんがやめるのを寂しがっているわよ。とくに男性陣」

 先輩が苦笑しながら男性社員たちをあごでさした。

「みんな、職場に日菜子がいると癒されるって言ってましたもんね」

 先輩の言葉に聡美もうなずいて同意する。

「その気持ちもわかるのよね。まじめに仕事をするだけじゃなく、指示される前に自分から率先して動いて、営業たちが働きやすいように準備してくれて。早川さんが来てくれてから、職場の雰囲気がよくなったもの」
「そんな、褒めすぎです」

 私は自分にできることをみつけてやっていただけなのに。

 先輩は髪を耳にかけながらふふっと笑う。

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