激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 アメリカにいる彼が、迎えにこられるはずがないのに。

 会えないのはわかっているけど、亮一さんにお誕生日おめでとうって言ってもらいたかったなぁ……。

 せめてメッセージを送ろうかなとスマホを取り出しちょっとためらう。

 時差があるからこちらが夜でもあちらは午前中。
 もう亮一さんは働いている時間だ。メッセージを送るのは迷惑かもしれない。

 画面を見ながら酔った頭でそんなことを考える。

 すると手もとに影が落ちた。誰かが私の前に立っているようだ。

 聡美が戻って来たのかな。
 そう思い顔を上げた私は、そこに立つ人物を見て息をのむ。

 スマホを持つ指が震えた。

「康介……」

 こちらを見下ろしているのは、元カレの康介だった。

「日菜子、話がしたい」

 固い口調で言われ戸惑う。今更なにを話そうというんだろう。

「私は話すことなんてない」
「ちゃんと謝りたいんだ」

 顔をそむけ拒絶しようとしたけれど、彼からでた謝罪の言葉に驚いて動きが止まった。

「日菜子、悪かった」

 康介は浮気がばれたときですら謝ろうとしなかったのに。
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