激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 少しも動じずうなずいた亮一さんに驚いたのか、康介は言葉を詰まらせる。

「も、問題しかないだろ……。自分を愛してくれない女と一緒にいたって、なんの意味もない」
「お前は見返りがないと人を愛せないのか?」

 低い声で問われ、康介は黙り込んだ。

「俺は彼女のそばにいられるだけで幸せだし、彼女を幸せにするために全力で尽くす。それでも日菜子の心がほかの男に奪われたのなら、俺の努力が足りなかっただけだ」

 亮一さんはそう言い切る。
 そんなことを堂々と言えるのは、彼が自分に自信があるからだ。

 他人からなにを言われても揺らがない。ましてや周りの人を貶して自尊心を満たしたりしない。
 人に責任を押しつけず、すべてを受け止める強さがある。
 人としても男性としても本当に魅力的だと思う。

「恋人を幸せにする努力すらできないお前には、日菜子は渡さない。もう二度と顔を見せるな」

 亮一さんに見下ろされた彼は、悔しそうに舌打ちをしてきびすを返した。

 複雑な気持ちでその背中を見送っていると、「日菜子ーっ!」と私の名前を呼ぶ声がした。

「無事でよかったぁ!」

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