激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 電話をかけてきてくれたのは、兄の恋人の早苗さんだ。

『彰が日菜子は元気にしてるのかっていつも心配してたから』
「気になるなら、お兄ちゃんが電話をしてきたらいいのに」

 私があきれると、早苗さんは『照れくさいのよ』と笑う。

 ふたりはお互いにわかり合っていて、まるで熟年夫婦のようだ。

『日中ひとりで寂しくない?』
「大丈夫だよ。お散歩に行ったりお買い物をしたりして楽しんでる。あと、大使夫人がとても優しい方で、お食事に誘ってくれたり着物の着付けを教えてくれたりするの」
『それは心強いわね』

 以前浜辺さんが言っていた通り、大使夫人はとてもいい人だった。

 はじめての海外生活で戸惑う私を気遣ってくれ、外交官の妻としての心構えもアドバイスしてくれた。

 もともと学ぶのが好きな私が真剣に話を聞いていると、昔教員に憧れていたという彼女の心に火がついたらしく、着物の着付けや日本文化、アメリカの歴史まで、さまざまなことを教えてくれた。

 知的で博識な彼女との会話はとてもおもしろくて、大使夫人に誘われるのが楽しみになった。

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