激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 たくさんのキッチンカーやテントが並び、ホットドッグやポップコーンが売られていた。
 風船が配られていたり、音楽が流れていたり、まるでお祭りだ。

 人間が苦手な犬たちに、たくさんの人が行きかうにぎやかな環境に慣れてもらおうという意図もあるらしい。

 様々な種類の犬が入った大きなゲージが並ぶ。

 人が通るたび尻尾を振る子もいれば、居心地が悪そうにゲージの隅で丸くなったり人間から目をそらしたりする子もいる。
 犬たちの性格もそれぞれだ。

「亮一さんは犬派なんですか?」
「動物はなんでも好きだよ。日菜子は?」
「私は大きい犬が好きです。ぎゅーって抱き着きたくなる感じの」
「へぇ」

 そんな話をしながら会場内を見て回る。

「亮一さんは大使館でどんなお仕事をしているんですか?」
「今は年明けから予定されている日米通商交渉の根回しをしているところだ」
「難しそうなお仕事ですね」
「そういえば、来週大使公邸でパーティーが開かれるんだ。できれば日菜子も参加してほしい」
「はい。わかりました」

 そう言いながらごくりと息をのむ。

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