激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 少人数のお食事会やホームパーティーには参加したけれど、公邸で行われるオフィシャルなパーティーに行くのははじめてだ。

「緊張しなくても大丈夫。日菜子は大使夫人のお気に入りだから」
「大使夫人が優しいだけです」
「あの人は意外と厳しい人だ。誰にでも親切にするわけじゃない。現に前の大使夫人とはそりが合わなくて相当やりあったそうだし」

 多分、浜辺さんが言っていた方だろう。

「亮一さんの足を引っ張らないようにがんばりますね」
「気負う必要はないからな」

 優しく言われ、「はい」とうなずく。

 そのとき背後から声をかけられた。外国人の男性が亮一さんに向かって手をあげている。

『亮一も来ていたんだね』

 親し気に話しかけてきた男性に、亮一さんは足を止め会話をする。

 私を妻だと紹介してくれて挨拶をかわす。
 それから政治や経済のことなど難しい話をはじめた亮一さんに、邪魔をしないようにと思い小声で声をかけた。

「ちょっと会場を見て回っていますね」

「悪い」と謝られ、笑顔で首を横に振る。男性に会釈をし、のんびりと会場を見渡す。




「あ、あの子かわいい」

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