激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 大きく息を吐き、床にしゃがんで膝を抱える。
 脳裏には亮一さんと怜奈さんの姿が焼きついていた。

 亮一さんが怜奈さんを好きだってことはわかっていたのに、それでもやっぱりショックだった。

 彼が私以外の女性と一夜を過ごすなんていやだ。
 優しく微笑みかけるのも、熱っぽく愛を語るのも、甘いキスをするのも。
 全部いやだ。

 亮一さんは私にしたように、情熱的に彼女を抱くんだろうか。
 そう思うだけで、身を焦がすほどの嫉妬に襲われた。

 そのとき胃のあたりに不快感が込み上げてきた。

 キッチンのシンクに手をつき咳き込むと、激しい吐き気がした。

 昼食はヨーグルトしか食べなかったせいで、嘔吐感はあるのに吐き出すものがない。
 ゴホゴホと咳き込んでも胃液しか出てこず、のどが痛んだ。

 肩で息をしながら混乱する。
 風邪もひいていないのに吐くなんて……。

 そういえば最近食欲がなかった。
 温かいものを食べたいと思えなくて、ヨーグルトやフルーツですませることが多かった。

 はっとしてカレンダーを見る。
 生理が遅れていることに気づいて血の気が引いた。

「まさか、妊娠……?」

< 201 / 231 >

この作品をシェア

pagetop