激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
「どうして亮一さんは日本にいるんですか? ワシントンに赴任しているはずなのに」
「あぁ。ちょっと用事があって一時的に帰国していたんだ。こちらにいるのは数日で、すぐにまた向こうに戻る」
「お仕事の用事ですか?」

 亮一さんは「いや、私用だけど詳しい話は」と言葉を濁した。

 私には言いたくないことなのかな。
 距離を置かれたような気がして、少し寂しく感じる。

「用事を済ませて車で走っていたら、橋の上に日菜子ちゃんらしき人影を見つけた。胸騒ぎがして車を停めて駆け寄ったら、橋から飛び降りようとしていて心臓が止まるかと思ったよ」
「飛び降りようとしていたわけじゃ……」

 ただ途方にくれて水面を眺めていただけだ。
 このまま飛び込んでしまえば楽になるのかな……なんて想像はしたけれど。

 私が言い訳をすると、亮一さんに睨まれた。
 慌てて肩をすぼめ「すみませんでした」と謝る。

「話を聞いたら彼氏に浮気されてかなりショックを受けているようだったし、雨に打たれてずぶぬれだったし。このまま家に連れて帰ったら彰が心配して大騒ぎするだろうから、とりあえずホテルに泊まることにしたんだ」

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