激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 私が帰ってくるのを今か今かと待ち構えているだろう。
 想像するだけで背筋が冷たくなった。

「相変わらず彰は心配性だな」

 背後からの声に驚いて振り向く。
 いつの間にか亮一さんが私のうしろに立っていた。
 肩越しにスマホの画面を見て、大きく息を吐き出す。

「そういえば、どうして日菜子ちゃんは外交官になる夢をあきらめたんだ?」

 突然の質問に戸惑いながら答える。

「第一志望の大学に落ちてしまったからです」

 高校時代、私は亮一さんの出身校でもある最難関の国立大学を目指していた。

 けれど受験直前の冬に両親が亡くなり、そのショックで勉強に集中できず大学に落ちた。

 外交官のほとんどは名門大学出身者だから、受験に失敗した私は外交官をあきらめた。

「でも、専門職や一般職ならそこまで出身大学にはこだわらない。日菜子ちゃんが卒業した大学なら可能性はあったはずだ」
「それは、そうなんですけど……」
「本当は、彰のためだろ」

 確信をつかれ言葉に詰まる。

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