激情を秘めたエリート外交官は、最愛妻を啼かせたい~契約結婚なのに溺愛で満たされました~
 なんだろうとふたりで兄のほうを見る。

「俺の前でいちゃいちゃするなぁっ!」

 センターテーブルをひっくり返しそうな勢いで怒鳴られた。
 思わず身を固くした私の肩を、亮一さんが安心させるように抱いてくれる。

「彰、大声で怒鳴るのはやめろ。日菜子がおびえるだろ」
「なに言ってんだ。大事な妹をたぶらかしやがって! 絶対に結婚は許さないし、アメリカになんて行かせないからな!」
「どうして」
「危ないからだよ! 海外より日本にいるほうがずっと安全だ」
「じゃあ聞くが、安全な国にいれば幸せになれるのか?」
「当たり前だろ。俺は日菜子のことを思って……」
「お前より俺のほうが、ずっと日菜子を大切に思ってる」
「なんだと……っ!」

 兄がこぶしを握って立ち上がる。

 今日は結婚を許してもらうために来たのに、どうして亮一さんは兄を煽るようなことを言うんだろう。

 このままじゃ殴り合いのけんかになるんじゃ……。

 ハラハラしている私の隣で、亮一さんが冷静な口調で言った。

「俺は、心配だからって理由だけで、日菜子を縛りつけたりしない」

 その言葉に、兄の勢いが止まった。

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